肩腱板損傷 (肩腱板断裂)とは
肩のトラブルには四十肩、五十肩、肩こりなどがありますが、肩腱板損傷もその1つです。ここでは肩腱板損傷とは何かについて解説します。
概要

肩腱板損傷 は、棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋で構成されている「腱板」に何らかの断裂があった場合に生じます。腱板が切れることで様々な痛みが生じるほか、肩が上がらなくなることもあります。
腱板は構造的に不安定になりやすい肩関節をサポートし安定的に使えるようにするために存在するものです。腱板が切れることで肩関節が不安定な状態になってしまうのです。
腱板は上腕骨とくっつく形になっていましたが、それが分断されたような状態になります。肩が自由に動かなくなるので、四十肩や五十肩と思われる方もいますが、実際は四十肩や五十肩とは異なります。ただ肩腱板損傷自体が40代になってから発症する方が多いため、どうしても四十肩や五十肩を連想し、知名度的には低い肩腱板損傷をイメージしきれない方もいるのが実情です。
一方で、俗にいう「野球肩」も肩腱板損傷に該当します。野球選手によくある左肩痛、右肩痛は肩腱板損傷を指しているケースもあり、若い人でもなる場合があります。40代から腱板の劣化が起こるため、基本的には加齢が原因ですが、運動によって発症する場合もあるのです。
そして、日常的な生活にも影響を及ぼすようになり、膝の痛みだけではなく、関節の可動域が制限されてしまったり、関節に水が溜まり「関節水腫」になってしまったり、O脚やX脚へと変形してしまい、最終的に変形性膝関節症がどんどん進行してしまいます。初期段階で適切な治療をしないと厄介な病気がこの変形性膝関節症なのです。
四十肩・五十肩との違い
肩腱板損傷は上腕骨から筋肉が剥がれた状態ですが、四十肩や五十肩は肩関節の硬さが要因です。つまり、筋肉のトラブルが肩腱板損傷、関節のトラブルが四十肩や五十肩です。同じ肩が上がらない状況でも、誰かが腕を上げるサポートをすればしっかりと上げられるのが肩腱板損傷なのに対し、四十肩や五十肩はサポートがあっても上げにくい特徴があります。
一方で四十肩や五十肩は自然と回復することがあります。そのために治療も保存療法などが用いられることもありますが、肩腱板損傷は筋肉が剥がれてしまっており、筋肉をくっつけない限りはなんともなりません。
症状
肩腱板損傷の場合は、肩を上げる際に痛みが生じやすくなります。また肩を上げようにも上がらなくなったり、ジンジンとする痛みを感じることがあるので、これらが四十肩や五十肩と勘違いされる要素となっています。肩腱板損傷にも段階があり、完全な断裂ともなると激しい痛みで日常生活どころではありません。
構図としては、腱板が切れた状態で、切れた先の部分が周辺に接触する中で痛みが出やすくなる形です。炎症が出やすく、周辺に腫れが生じることもあります。この状態になると、痛みが強く出てしまい、日常生活にも悪影響が出ることもあるでしょう。
しかし、肩腱板損傷の状態にありながらも、痛みが全くないというケースもあります。この状態を「無症候性腱板断裂」と言います。炎症がそこまで激しくない、断裂していない部分がうまく機能して肩を動かせているなどのケースが考えられます。
無症候性腱板断裂によって断裂状態にありながらも違和感なく過ごせる人もいるでしょう。しかし、その間も断裂はどんどん悪化していき、いつかのタイミングで強烈な痛みにつながるかもしれません。
ケガなどで腱板断裂があると痛みが発生しやすく、加齢などが原因だと無症状になりやすいという傾向も見られます。
肩腱板損傷は加齢で起こりやすく、60代以上に絞ると4人に1人が抱える疾病です。しかしながら、半数以上は痛みなどを感じていないと言われています。ちょっと肩が痛いという感じだと、四十肩や五十肩を疑い、「まさか肩腱板損傷なんて…」という方もいるはずです。
ですが、慢性的に肩が痛くて、年齢を重ねた方の場合には肩腱板損傷の可能性を疑うべきです。そして、病名を確定させるためにも病院に向かうことをおすすめします。
診断方法
肩腱板損傷は最終的に病院での診断を受ける形で肩腱板損傷であることを確定していくことになります。実際に病院で診てもらうために、事前にセルフチェックをして肩の異常を知るのも1つの手です。ここからはセルフチェックの方法や病院で症状を確定する際の診断の中身をまとめました。
セルフチェックの方法
肩腱板損傷のセルフチェックですが、何かしらの要因で肩にアクシデントが生じた場合に行います。まず肩を上げようとして、腕などが上がらない時には肩腱板損傷の可能性が出てきます。
一番わかりやすいのは腕を横に上げていくやり方です。およそ60度から120度のところに痛みが出やすく、肩腱板損傷の可能性が考えられます。また両腕を開いて水平が保てない、痛みが出始める場合でも肩腱板損傷の可能性は高まるでしょう。
あとは肩に激痛が走る、肩に力を入れようとしても入らないなども肩腱板損傷の可能性があるでしょう。ただあくまでもセルフチェックなので、過度にチェックをしないことをおすすめします。
病院での診断
病院で肩腱板損傷の診断を行うには、まず肩を動かせるか、肩を動かしたら肩から音が生じていないか、筋肉の萎縮があるかなどのチェックを行っていきます。4つの筋肉で構成される腱板はそれぞれサポートする働きが異なるので、色々と動かしていく中で、どの動きがしにくいかをチェックします。
肩腱板損傷かどうかを確定させるために、レントゲンやMRIでチェックします。レントゲンの場合は、該当する部分を映してみると、腱板の部分に間隔の狭さが感じられることがあります。よりわかりやすいのがMRIで、本来腱板は黒い状態で映し出されますが、断裂していると白く映し出されます。
MRIなどを行うことで、別の肩の疾病の可能性も出てくるので、1つに絞り込むためにもレントゲンやMRIは欠かせません。
また肩腱板損傷の診察では「ドロップアームテスト」と呼ばれる検査を行います。ドロップアームテストは、医師が患者の腕を持ち上げて離した際に、そのまま維持できるか、はたまた腕が下がったり痛みがあったりしないかをチェックするものです。ドロップアームテストを行うことで肩腱板損傷の有無がわかります。
他にはホーンブローワーテストもあります。ホーンブローワーテストは手を顔に持っていくことが可能かどうかを見るもので、肩腱板損傷では腋の部分が開いてしまうため、その状態で肩腱板損傷があることが明らかになるのです。
この他にも様々な形で診察が行われますが、いずれの場合も何かしらの異常を認めた場合には肩腱板損傷の可能性が非常に高く、MRIなどで最終的な判断を下すことになります。
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